吉田裕介|自分のペースを大切にしながら高みを目指す
吉田 裕介 -Yusuke Yoshida-
ここだ!と感じた場所
ぶどう農家になる前は、WEB系のプログラマーとして勤めていました。
仕事自体が嫌になったわけではないんですが、社内で求められる役割や自分の将来像などを考えたときに、自分の理想とはズレがあると感じたんです。
いつかは田舎暮らしをしたいと考えていたので、少しずつ地方への移住を考えるようになりましたね。
移住就農する方々の多くは「農家になりたい → どこで何をつくろう?」という流れだと思うんですが、自分の場合は順序が逆で、移住するとしたら仕事は農業かな?という考え方でした。
都内で開催されていた『新・農業人フェア』などの相談会やイベントに参加するようになり、妻とも相談したりしながら、移住体験や農業体験などにも数多く足を運びました。
行った先々で「農業をやりたくて…」と伝えると、大体は「未経験からだと大変」「資金も必要です」「休みも取れません」というような厳しい言葉が並ぶことが多くて、ある場所では両親が亡くなっても休めないとまで言われた場所もありました。
ただ、須坂市は違ったんです。淡々とありのままの話をしてもらえて、心地よさを感じました。
また、須坂市を訪問したときに、県外から移住就農した方と話す機会があったんですが、実際に就農している方に「すべて自己責任の世界だけど、だからこそ自分がやりたいようにやればいいし、休みたければ休みをつくればいい」と言ってもらえたことで気持ちが楽になりましたね。
ぶどうの収入も魅力でしたし、「あ、ここだ!」と。
仕事をしっかりやって、ゆっくり体を休めて、次の仕事に備える。メリハリがあったほうが好きなんですよね。
ぶどう作りももちろん楽しいですが、世界には他にも色々楽しいことがある。世界の楽しいことを知りたいし、私は須坂から美味しいぶどうを届けたいと思っています。
質の高いぶどうをより多くつくりたい
2年間の研修を経て2017年に独立し、コピーライターの友人に考えてもらった「ひとつぶ堂」という農園名にしました。今年で営農4年目を迎えます。
周囲の方々に恵まれたお陰で畑の面積も少しずつ増えてきて、数年先の計画も立てられるようになってきました。
妻にも積極的に畑に出てもらって、夫婦で協力しながらやっていますが、ぶどう栽培は難しく、なかなか理想通りにはいかないですね。
ただ、勉強会などには積極的に行くようにしたりして、毎年少しずつですが自分の技術が上がっていると感じられることがあり、やりがいに繋がっています。
美味しいぶどうをつくるためには手間がかかり、細かい作業も多くなるので、より効率よく作業を進められるようにすることを意識しています。
あとは、きじまるクラブの中のコンクール(きじまるカップ)では優勝させてもらったことがあるんですが、規模が大きいコンクールでも受賞できるような、今よりも質の高いぶどうをつくれるようになりたいですね。
質の高いぶどうを栽培することができれば、今よりも高い価格で買ってもらえるようになりますし、それを少ない労力でできるようになれれば、自分の時間も増えますから。
そういった技術を身に付けていくことが目標ですね。
ただ、何かを犠牲にしてまで突き進むようなスタンスは苦手なので、これからも自分のペースは大切にしながら高みを目指して行きたいです。
6代目きじまるクラブ会長に就任
オリンピックイヤーである2020年は、きじまるクラブの会長に就任することになりました。6代目です。6代目といえば、室町時代にくじ引きで将軍に選ばれた足利義教が有名だそうですが、くじびきではなく総会で選ばれました。
きじまるクラブは楽しいクラブです。今まで悩みを相談して気が楽になったり、先輩の園地を見せてもらい技術指導を受けたりと、私にはなくてはならないクラブだと思っています。
会長として重責を担う自信はありませんし、経験も浅く技術的なアドバイスはあまりできないかもしれませんが、同じく農業を目指す方が悩みを相談できる場を作っていきたいと思います。
(取材時期:2020年1月)
相談会などに行くと“気持ちを試される”ようなアドバイスを受けることも多いと思いますが、企業の面接ではないので、最終的には自分自身がどうしたいかです。変に肩肘張ったり背伸びしたりせずに、自分の気持ちやビジョンを大切にしてもらいたいですね。
須坂市には新規就農者が多くいて、この「きじまるクラブ」で仲間づくりをすることもできますし、いろいろな人がいるので心強いと思いますよ。
ぶどうを育てるのは楽しい。自分にあった農業ができるように取り組んでいる。
吉田 裕介(よしだ ゆうすけ)
1978年生まれ。埼玉県出身。
田舎暮らしへの憧れから地方移住を決意し、須坂市でぶどう農家に。独立時に開業した「ひとつぶ堂」の園主。
自分たちの生活も大事にしながら、妻とふたりで協力して質の高いぶどうづくりに励んでいる。